MOND 理論とは何か——修正ニュートン力学の成功と限界、そして膜宇宙論による第一原理導出

膜宇宙論モデル v4.7.8 統合版| 坂口 忍(坂口製麺所)

【v4.7.8 更新注記(2026年4月16日)】
本記事を v4.7.8 統合版に基づき全面更新しました。

v4.7.8 の主な更新:
・新セクション⑩「dSph(矮小楕円体銀河)への MOND 拡張の限界と膜宇宙論の解答」を追加
・Bernoulli 予測 GStrigari = s₀(1-s₀) a₀ = 0.228 a₀ による Strigari 普遍加速度の第一原理導出(A級)
・J3 体制逆転の発見——dSph では MOND/条件15 が本質的に適用不可な理由を理論的に特定
・ブリッジ銀河 4個による条件15 → Strigari 連続遷移の観測的確認(4/4 A級)

v4.7(2026年4月13日)の主な変更点:
・条件15 最終形を確定(gc = 0.584 x Υd-0.361 x sqrt(a₀ x vflat²/hR)、scatter 0.286 dex = 固有限界)
・kappa=0 確定により理論構造を簡素化(条件14動力学的定式化を棄却、条件15のみの1層構造へ)
・MOND 棄却を 3経路で確立(p = 2×10-27, p = 8×10-33, p < 0.001)

MOND(Modified Newtonian Dynamics・修正ニュートン力学)は1983年にモルデハイ・ミルグロムが提唱した理論だ。ニュートン力学を「弱い重力域でだけ修正する」というシンプルなアイデアで、暗黒物質を仮定せずに銀河の回転曲線を驚くほど正確に説明する。しかしMONDは長年「なぜ成り立つのか」という根拠を持たない経験則に留まってきた。膜宇宙論は、このMONDの補間則を弾性自由エネルギーの平衡条件から第一原理的に導出することに成功し、さらに MOND が仮定する「普遍定数 a0」を幾何平均法則 gc = eta x sqrt(a₀ x G x Σ₀) として一般化した。SPARC 175銀河で MOND に対し ΔAIC = -130 の圧倒的優位を示し、gc が普遍定数ではなく銀河ごとに異なることを p = 2.0×10-27 で確立した。v4.7.8 では圧力支持系 dSph 31銀河への拡張により、MOND が本質的に破綻する体制(J3 体制逆転)を発見し、膜の固有熱揺らぎ s₀(1-s₀) a₀ = 0.228 a₀ が Strigari 普遍加速度を第一原理導出する(§⑩)。

① MOND理論の基本——ミルグロムの着想

ミルグロムは銀河回転曲線のデータを精密に分析し、奇妙な事実に気づいた。「不整合が大きい銀河」と「小さい銀河」を分けているのは、距離でも質量でもなく、重力加速度の大きさだ。ある特定の加速度スケール a₀ を境に、物理法則が変化しているように見える。

MOND の基本アイデア:

g_N >> a₀(強重力域):通常のニュートン力学が成立
g_obs ~ g_N

g_N << a₀(弱重力域):力学が修正される g_obs ~ sqrt(a₀ x g_N) 加速度スケール: a₀ ~ 1.2 x 10^(-10) m/s^2 -> この一つの定数で数百の銀河の回転曲線が再現される

a₀ の数値は宇宙論的定数 H₀(ハッブル定数)と関係する:a₀ ~ c H₀ / (2pi)——これは偶然ではないと多くの研究者が感じているが、標準理論の枠内では説明がつかない。

② MOND の補間則——標準的な定式化

MOND では「補間関数」mu(x) を用いて、ニュートン域と修正域を滑らかにつなぐ。最も広く使われる補間則(simple interpolating function)は次の形だ:

MOND 補間則(simple form):

g_obs = g_N / mu(g_N/a₀)

mu(x) = x / (1+x) (simple 補間関数)

展開すると:
g_obs = (g_N + sqrt(g_N^2 + 4 a₀ g_N)) / 2

x >> 1(ニュートン域):g_obs ~ g_N
x << 1(MOND域) :g_obs ~ sqrt(a₀ x g_N) しかし——なぜこの形なのか? a₀ はどこから来るのか?
MONDはその答えを持たない

MOND の根本的な問題は「うまく当てはまる経験則」であって、第一原理から導出された理論ではないという点だ。補間関数の形も a₀ の値も、観測データへの当てはまりから逆算して決めたものに過ぎない。

③ MOND の驚くべき予測力——暗黒物質なしで銀河を説明する

理論的根拠が曖昧にもかかわらず、MOND の予測力は標準的な暗黒物質モデルに匹敵するか、場合によっては上回る。

MOND が成功している観測:

銀河回転曲線:バリオン質量分布だけから回転曲線の形を予測——暗黒物質のフリーパラメータなし
バリオン Tully-Fisher 関係:vflat4 ∝ G x Mbar x a₀ を精度よく予測(scatter < 0.1 dex)
低面輝度銀河:暗黒物質モデルが苦手とする低面輝度銀河でも良好なフィット
矮小銀河:Local Group の矮小銀河の速度分散を定性的に再現
ラドクリフ-Scalo 関係:銀河の恒星形成率と g_N/a₀ の相関を予測

パラメータ1個(a₀)で数百の銀河を記述できる事実は偶然ではない

MOND が苦手な観測:

銀河団スケール:銀河団の質量不足を MONDだけでは補いきれない(追加の質量が必要)
宇宙論的構造形成:CMB(宇宙マイクロ波背景放射)の音響振動ピークを再現しにくい
相対論的拡張:ローレンツ不変な完全版理論(TeVeS など)の構築が困難
矮小楕円体銀河(dSph):圧力支持系では MOND の a₀ が一定という仮定自体が適用不能な体制に入る(v4.7.8 §⑩で詳述)

MOND は銀河スケールで強力だが、それより大きなスケールや、バリオン駆動の弱い極端な低質量系では補強が必要だ。

④ MONDの未解決問題——「なぜ」が答えられない

MOND が半世紀近く「補助的な仮説」に留まってきた最大の理由は、理論的根拠の欠如だ。

MOND が答えられない問い:

Q1:なぜ加速度スケール a₀ = 1.2×10^(-10) m/s^2 なのか?
-> 観測から逆算した値。起源不明。

Q2:なぜ補間関数 mu(x) = x/(1+x) なのか?
-> 当てはまりの良さで選択。物理的根拠なし。

Q3:なぜ弱い重力域でだけ力学が変わるのか?
-> 「そう仮定したから」以上の説明なし。

Q4:銀河団スケールでなぜ成立しないのか?
-> 適用限界の物理的説明がない。

Q5:なぜ矮小楕円体銀河(dSph)で系統的にずれるのか?
-> Strigari 普遍加速度 ~10^(-11) m/s^2 の起源が説明できない。
-> v4.7.8 で膜宇宙論が解答(§⑩)

MOND は「何が起きているか」を記述するが
「なぜ起きているか」を説明しない

⑤ 膜宇宙論による MOND の第一原理導出

膜宇宙論は、MOND補間則が「経験則」ではなく弾性自由エネルギーの平衡条件から必然的に導かれる帰結であることを示した。

導出の3ステップ:

Step 1:弾性自由エネルギーを書き下す(T-7)
U(eps; c) = -eps – eps^2/2 – c x ln(1-eps)
= F_el(eps)(弾性エネルギー項)+ F_conf(eps)(配置エントロピー項)
F_conf = -c x ln(1-eps) は配置エントロピーの消失から第一原理導出(T-7)
補題1-4により forest+cavity 有効理論として正当化【Level A・確立】

Step 2:平衡条件を解く(T-3)
dU/d(eps) = x(x = g_N/g_c)
-> (c-1+eps^2)/(1-eps) = g_N/g_c
-> 解析解:eps_eq = (-x + sqrt((x+2)^2-4c)) / 2
残差 10^(-13) 以下で確立

Step 3:実効重力加速度を導出(T-3)
g_obs = g_N / (1 – eps_eq)
-> 展開すると:
g_obs = (g_N + sqrt(g_N^2 + 4 x g_c x g_N)) / 2

c = 1 のとき:標準 MOND 補間則(simple form)に完全一致
c != 1 のとき:銀河型依存の一般化 MOND

ニュートン域と MOND 域の物理的意味:

g_N >> g_c(ニュートン域):
eps_eq -> 1(膜が大きく展開)
-> 重力子が露出 -> g_obs ~ g_N

g_N = g_c(遷移域、c=1):
eps_eq = 0.618(黄金比)
-> 弾性エネルギーと重力がバランス

g_N << g_c(MOND域): eps_eq ~ sqrt(g_N/g_c)(展開が制限) -> 膜構造が主役 -> g_obs ~ sqrt(g_c x g_N)(重力増幅)

【v4.7】kappa=0 確定により、この局所平衡 mu(x) = x/(1+x) は
各半径で独立に成立。RMS = 0.090 dex(3003点、167銀河)

a₀ は「謎の定数」ではなく膜の弾性特性から決まる物理量だ

⑥ 中核的発見——幾何平均法則 gc = eta x sqrt(a₀ x G x Σ₀)

膜宇宙論の中核的発見は、膜の臨界加速度 gc が普遍スケール a₀ と特性加速度スケール G x Σ₀(= vflat2/hR) の厳密な幾何平均であるという法則だ。SPARC 175銀河の Radial Acceleration Relation から rs を使わずに gc を測定し、特性加速度スケール G x Σ₀(vflat2/hR に比例)との関係を調べた結果、この法則が確立された。

幾何平均法則:

g_c = eta x a₀^(1-alpha) x (G x Σ₀)^alpha

実測:alpha = 0.545 +/- 0.041

検定結果:
alpha = 0 (MOND: g_c = 定数) :p = 2.0×10^(-27) で棄却
alpha = 0.5(厳密幾何平均) :p = 0.27 で棄却できない
alpha = 1.0(純 G x Σ₀ 比例) :p = 2.2×10^(-21) で棄却

確立された法則:g_c = eta x sqrt(a₀ x G x Σ₀)
MOND に対し ΔAIC = -130(1パラメータ: eta のみ)

条件15 最終形(v4.7 確定):

gc = 0.584 x Υd-0.361 x sqrt(a₀ x vflat2 / hR)

alpha = 0.5(固定、最適)|beta = -0.361 +/- 0.078|eta₀ = 0.584
R^2 = 0.607|scatter = 0.286 dex(固有限界)|LOO scatter = 0.290 dex
MOND棄却:p = 1.66 x 10-53

scatter 分解:固有物理分散 0.227 dex (63.5%) + 測定誤差 0.173 dex (36.5%)
固有分散の94%は還元不能な銀河間多様性

この法則の意味は深い。標準 MOND は「すべての銀河で臨界加速度は a₀ という一つの普遍定数」と仮定する。しかし実際の gc は銀河の局所的な特性加速度スケールにも依存しており、a₀ は gc の「全銀河平均」に相当する。平均的な銀河(G x Σ₀ ~ a₀/eta^2)では gc ~ a₀ となりMONDが回収されるが、矮小銀河(低Σ₀)では gc < a₀、大質量銀河(高Σ₀)では gc > a₀ となる。

ジャックナイフ独立性検証:
ランダム半分割 1000回:alpha(train) = 0.545+/-0.037, alpha(test) = 0.550+/-0.038
alpha = 0.5 棄却不可の割合:96.5%
MOND より改善の割合:100%(中央値 31%)
ブートストラップ 10000回:alpha = 0.547+/-0.037, 95% CI = [0.479, 0.625]

alpha = 0.5 は普遍定数——alpha の自由化で改善わずか +0.3%

⑦ MOND を一般化する——弾性パラメータ c と銀河の二相構造

幾何平均法則が gc の「理論的骨格」であるのに対し、T-9 の経験式は gc の「物性依存の詳細構造」を与える。gc = a₀ x c と書き換えると、c は銀河の星質量・形態型・面輝度から決まる弾性パラメータ(0 < c <= 1)だ。

ハッブル型ごとの gc/a₀ 中央値(SPARC 167銀河・T-5):
早期型 Sab(T=2):gc/a₀ ~ 1.73 -> ほぼニュートン的
中間型 Sc (T=5):gc/a₀ ~ 0.42 -> MOND域に入る
後期型 Im (T=10):gc/a₀ ~ 0.08 -> 全域がMOND域

Sab -> Im で gc が系統的に 22 倍低下(p < 0.001)
塑性領域仮説(条件14/15)の初の定量的支持

⑧ MONDが「銀河団で成立しにくい」理由——膜宇宙論の解釈

MOND の大きな弱点とされてきた「銀河団での質量不足」も、膜宇宙論の枠内では自然な帰結として理解できる。

銀河団での MOND の問題:
銀河団スケールでは MOND だけでは質量を 2~3 倍程度補いきれない

膜宇宙論の解釈(T-8・提案G):

銀河団では光路が膜の折り目を多数横切る(n_fold が大きい)
-> AB 効果による Ψ₀(漏れ出した重力ポテンシャル)の透過増幅が働く
-> M_lens/M_dyn > 1 の系統的乖離が生まれる

HSC-SSP Y3 弱レンズ cl1 個別解析(z=0.313, sigma_v=527 km/s):
膜モデル(gc free):chi^2/dof = 1.54、ΔAIC = -4.4 vs NFW
gc = 1.58 a₀(95% CI: [0.79, 2.52])

銀河団での「MOND の限界」は AB 効果の追加透過で補完される
Ψ₀ が銀河スケールよりも銀河団スケールで相対的に大きい

⑨ 定量的検証——SPARC 175銀河で MOND を超える精度

膜宇宙論の一般化MOND(幾何平均法則 + 弾性パラメータ c)は、標準MOND(gc = a₀ 固定)よりも高い精度を持ちながら、第一原理に裏付けられている。

モデル比較(AIC・SPARC 175銀河):

A: MOND(g_c = a₀) -> ΔAIC = 0(基準)
C: 幾何平均(alpha = 0.5 固定) -> ΔAIC = -130
B: 幾何平均(alpha 自由) -> ΔAIC = -130
D: 自由べき -> ΔAIC = -130

MOND棄却 3経路(v4.7確定):
(1) RAR直接: p = 2.0×10^(-27)
(2) 深MOND逆変換: p = 8×10^(-33) (12σ)
(3) LITTLE THINGS 独立: p < 0.001 ΔAIC = -130 は圧倒的優位——MOND の「g_c は普遍定数」を明確に否定
g_c は銀河ごとに異なり、幾何平均法則で予測できる



⑩ dSph への MOND 拡張の限界と膜宇宙論の解答(v4.7.8)

MOND は回転支持系(渦巻銀河)で優れた予測力を持つ。しかし圧力支持系である矮小楕円体銀河(dSph)に適用すると、a₀ = const の仮定は本質的に破綻する。v4.7.8 ではその根本原因を理論的に特定し、膜の自発的熱揺らぎから Strigari 普遍加速度を第一原理導出した。

10.1 J3 体制逆転——MOND と条件15が適用不能な理由

J3 体制逆転の発見(A級):

条件15を dSph 31銀河に適用 -> +1.5 dex の系統的バイアス + 0.9 dex の散布

根本原因:膜 Jeans 質量 M_J,mem と標準 Jeans 質量 M_J,std の大小関係が逆転

SPARC(回転支持):M_J,std <= M_J,mem -> バリオン分布が膜状態を駆動(条件15 成立)

dSph(圧力支持):M_J,mem << M_J,std(28/31 銀河で確認) -> 膜が構造を設定、バリオンが追従

因果の方向が逆転する
-> dSph では g_c はバリオン面密度ではなく膜固有パラメータで決定
-> MOND の a₀ = const も条件15の eta x sqrt(a₀ x G x Σ₀) も適用不可

SPARC と dSph を同一の RAR(log(gbar/a₀) vs log(gobs/a₀))平面に重ねると、Υdyn = gobs/gbar で明確に分離される。SPARC RAR雲の中央値 Υdyn = 2.75 に対し、dSph 中央値は 35.1——約13倍の差がある。帯域 10 < Υdyn < 30 をJ3 遷移帯と定義する。

10.2 Bernoulli 予測——Strigari 普遍加速度の第一原理導出

J3 体制では結合 c(バリオン駆動)が 0 に近づき、膜は固有の熱平衡状態に入る。自己無撞着方程式の Q->0 極限は普遍的自発弾性率を与える:

c->0 極限の固有膜状態:

s₀ = 1 / (1 + exp(3 / (2 T_m)))

T_m = sqrt(6) で数値評価:
exp(3/(2 sqrt(6))) = exp(0.6124) = 1.8450
s₀ = 0.3515(膜の普遍的自発弾性率)

Bernoulli 分散(2状態系の普遍揺らぎ):
Var(s) = s₀ (1 – s₀) = 0.3515 x 0.6485 = 0.228

G_Strigari = s₀(1 – s₀) a₀ = 0.228 a₀
= 2.74 x 10^(-11) m/s^2(Strigari 普遍加速度)

MOND の a₀ は回転支持系の膜-バリオン結合強度で決まるが、
dSph では膜自身の 2状態熱揺らぎが支配する
-> 2つの「普遍加速度」は同じ膜理論の異なる極限

10.3 2 集団独立再現と連続遷移

Bernoulli 予測の 2集団独立再現(A級):

集団1(圧力支持系):dSph 31銀河
gobs 中央値 = 0.240 a₀(予測との比 1.053、5% 一致

集団2(回転支持系の外縁部):ブリッジ銀河外側 30点
gobs 中央値 = 0.219 a₀(予測との比 0.961、4% 一致

ブリッジ銀河 4個(ESO444-G084, NGC2915, NGC1705, NGC3741)が
銀河内半径方向に Υdyn の有意な連続増加を示し(z = 2.4~21.6)、
SPARC 条件15体制 -> J3 遷移帯 -> dSph 体制への連続遷移を確認(4/4 A級)。

-> 動力学的支持(圧力 vs 回転)が異なる 2 集団で
単一の理論予測値 G = s₀(1-s₀) a₀ が独立に再現される。
フリーパラメータなしの非自明予測(MOND 単独では説明困難)。

10.4 MOND への含意——2つの普遍加速度

膜宇宙論は MOND の「a₀ は普遍定数」という仮定を2つの方向から修正する:

修正 1(⑥で確立):回転支持系では gc は普遍定数ではなく
幾何平均 eta x sqrt(a₀ x G x Σ₀) で銀河ごとに異なる。
a₀ はその「全銀河平均」にすぎない。

修正 2(⑩で確立):圧力支持系 dSph では因果の方向自体が逆転し、
gobs はバリオン量に依存せず膜固有の熱揺らぎ
s₀(1-s₀) a₀ = 0.228 a₀ で決まる。

-> MOND の a₀ (= 1.0 a₀) と Strigari の G (= 0.228 a₀) は
同じ膜理論の異なる極限として統一的に理解できる。

回転支持系 -> 条件15体制(バリオン駆動)-> g_c = eta x sqrt(a₀ x G x Σ₀)
圧力支持系 -> J3体制(膜駆動)-> g_obs = s₀(1-s₀) a₀ = 0.228 a₀
両者をつなぐ遷移はブリッジ銀河 4個で観測的に確認済み

MOND理論 vs 膜宇宙論——比較表

項目 標準MOND 膜宇宙論(v4.7.8)
理論的根拠 経験則(なぜ成立するか不明) 弾性自由エネルギーの平衡から第一原理導出(T-3)
F_conf = -c x ln(1-eps) を配置エントロピーから導出(T-7・補題1-4)
加速度スケール a₀ は普遍定数(起源不明) gc = eta x sqrt(a₀ x G x Σ₀) — 幾何平均法則(ΔAIC = -130)
補間関数の形 経験的に選択 弾性平衡の解析解として一意に決まる
銀河型依存性 説明できない(a₀ 固定) Sab->Im で gc が22倍低下——膜の二相構造が反映
銀河団での限界 質量不足(2~3倍)が残る AB 効果の追加透過で補完(T-8)
HSC弱レンズ: ΔAIC = -4.4 vs NFW
dSph への適用 a₀ = const では +1.5 dex オフセット J3体制逆転で原因特定。Bernoulli予測 s₀(1-s₀) a₀ = 0.228 a₀ が dSph 5%・ブリッジ 4% で独立再現(v4.7.8 A級)
統計的検証 良好だが散乱が大きい 条件15: scatter = 0.286 dex(固有限界)
ジャックナイフ 96.5% で alpha=0.5 棄却不可
宇宙論との接続 困難(相対論的拡張が複雑) Z2 SSB で宇宙論的起源を説明(Level B)

結論——MOND は正しかった。そして「なぜ」もわかった

MOND理論と膜宇宙論の関係を6点でまとめる:

  1. MOND は正しい現象論だった:弱い重力域で重力が増幅されるという MOND の予測は正しい。問題は「なぜか」の根拠がなかったことだ
  2. 膜宇宙論が「なぜ」を説明した:弾性自由エネルギー U(eps; c) の平衡条件を解くと、MOND 補間則(simple form)が c=1 の極限として自動的に導出される(T-3)。F_conf = -c x ln(1-eps) の配置エントロピー項が forest+cavity 有効理論として第一原理導出された(T-7・補題1-4)
  3. a₀ は普遍定数ではなかった:正確には gc = eta x sqrt(a₀ x G x Σ₀) であり、膜の臨界加速度は普遍スケール a₀ と特性加速度スケールの幾何平均で決まる。MOND の「gc は定数」仮説は p = 2.0×10-27 で棄却、幾何平均法則は ΔAIC = -130 の圧倒的優位を示す
  4. 銀河団での限界も解消される方向:AB 効果による Ψ₀ の追加透過(T-8)が銀河団スケールでの質量不足を補完。HSC弱レンズでも ΔAIC = -4.4 vs NFW
  5. kappa=0 による理論簡素化(v4.7):膜剛性ゼロが確定し、各半径で mu(x) = x/(1+x) が独立に成立(RMS = 0.090 dex)。条件15のみの1層構造に簡素化。scatter 0.286 dex の94%は還元不能な銀河間多様性
  6. dSph では MOND が本質的に破綻する(v4.7.8):dSph 28/31 銀河で膜 Jeans 質量の大小関係が逆転し(J3 体制逆転)、バリオン駆動の条件15/MOND が適用不能な体制に入る。代わりに膜の固有熱揺らぎ s₀(1-s₀) a₀ = 0.228 a₀ が Strigari 普遍加速度を第一原理導出する。この予測は dSph 31銀河(5%一致)と SPARC ブリッジ銀河外側 30点(4%一致)の 2 独立集団で再現され、ブリッジ銀河 4個で条件15->Strigari 連続遷移が銀河内半径方向に観測的に確認された(全4基準 A級)
40年間「なぜ」の答えがなかった MOND 補間則は、経験則ではなかった。宇宙を構成する弾性膜の自由エネルギー U(eps; c) の平衡条件を解けば、補間関数の形も加速度スケールも——すべてが一本の式から導き出される。MOND は「膜の弾性物理学」の低エネルギー極限だったのだ。ミルグロムが着想した「加速度 a₀ での転換」は、膜が展開から制限に切り替わる物理的閾値 gc = eta x sqrt(a₀ x G x Σ₀) として、いま初めて微視的な根拠と幾何平均の構造を得た。そして v4.7.8 では、この枠組みが圧力支持系 dSph にまで拡張された——バリオン結合が消失する c->0 極限で膜は自発的熱揺らぎ s₀(1-s₀) a₀ = 0.228 a₀ を示し、これが Strigari 普遍加速度の正体である。回転支持系(条件15体制)から圧力支持系(J3 体制)まで、MOND 以前に統一的な説明を持たなかった一連の「普遍的加速度」は、膜の弾性-熱力学から第一原理的に導出される

【確立度の整理——v4.7.8 統合版】
Level A(確立):
幾何平均法則 gc = eta x sqrt(a₀ x G x Σ₀)【alpha=0.545+/-0.041, ΔAIC=-130】/
alpha=0(MOND)棄却【p=2.0×10-27、深MOND逆変換 p=8×10-33】/
alpha=0.5 は普遍定数【自由化で+0.3%のみ改善】/
条件15 最終形【R^2=0.607, scatter=0.286 dex 固有限界】/
一般化MOND の第一原理導出【T-3・数学的事実】/
F_conf の配置エントロピー導出【T-7・補題1-4確立】/
kappa=0 確定【膜剛性ゼロ、各半径独立、RMS=0.090 dex】/
HSC-SSP Y3 弱レンズ条件15確認【A級・gc=2.73+/-0.11 a₀、ΔAIC=+472】/
J3 体制逆転【A級・28/31 dSph で確認】
Bernoulli 予測 G = 0.228 a₀【A級・2集団独立再現 4-5%】
条件15 -> Strigari 連続遷移【A級・ブリッジ 4/4、全4基準達成】
gobs Mbar 独立性【A級・0.2σ null】

Level B(示唆的):
HSC弱レンズ cl1: MOND/膜 > NFW(ΔAIC=-4.4~-4.9)【B+級】/
銀河団での AB 効果補完(T-8・提案G)【B+級】/
Z2 SSB(e=phi^2)【13式系を保存する最小拡張】

v4.7.8 新規の部分棄却:
純粋 Strigari 普遍性(gobs = const)【rh 依存 -3.4σ で部分棄却。sigma-size 関係 sigma ∝ rh0.27 に起因】


膜宇宙論モデル v4.7.8 統合版| 使用データ:SPARC(Lelli et al. 2016)175銀河, LITTLE THINGS(Oh et al. 2015)26銀河, HSC-SSP Y3, McConnachie (2012) 31 dSph, Walker et al. (2009), Wolf et al. (2010), Strigari et al. (2008)| 坂口 忍(坂口製麺所)| 2026年4月16日更新