事前登録予言
——膜を見分ける検定は、いま一本
※ 2026-08 に版番号系列を再編(旧 v2.29/v3.92 系列を継承)。日付が新しいほうが最新版です。
「③ P1 の現状」を書き直しました。基準文書 v2.67(2026-09-24)・v2.68(2026-09-25)に記録された零テストの準備工程の結果にもとづきます。(1) 必要な銀河の数は、思っていたより桁違いに多い見込みです——実際の履歴プロキシ(拘束付きの宇宙再現と星形成史から作ったもの)は銀河どうしでほとんど値が違わず、3σ には約 2 万〜15 万個が要る見込みになりました(見積り・判定ではありません)。旧版の必要規模 約 304〜672 個は、簡易模型(toy)の履歴の幅で較正した値です。(2) 代理量の当て具合 ρ = 0.764 は、条件を満たせた 101 銀河(縮小母集団)での値で、零テストに十分だという根拠にはなりません。SPARC 44 銀河での先行の試し打ちは、傾きがゼロとも予言とも区別できませんでした(零テストそのものではありません)。(3) WALLABY 本サーベイが完了しても使える銀河は約 462 個(参考値)の見込みで、今の代理量のままでは決着は当面見込めないと記録し、当面は理論の側に重心を置いています。零テストはまだ実行していません。膜固有の証拠になりうる観測経路は零テスト(R1)一本——という位置づけは不変です。旧版の「89 個で robust NULL」は、元の記録が確認できていないため根拠から外しました(③ の注記)。
変更は零テスト(R1)の実行に向けた前進です。(1) 実行設計 R2 が初めて実行段階に入りました(2026-09-18〜20)。拘束付きの宇宙再現(Manticore-Local の後験 80 実現)から零テストの 4 要素のうち「現在の局所密度」は確定しました。一方「履歴プロキシ ε_max^pred」は、膜の記憶をどの時代から積むか(積分の開始時刻)で値が動き、一意に定まりませんでした。この不定性を 1 点に絞った要求が C-R2-1(記憶の重み)として登載され、続く作業で銀河ごとの星形成史(z0MGS の星質量と星形成率から「星質量の半分ができた時刻」)を膜の記憶の開始時刻の代理に用いる観測経路で「充足(代理・判定は保留)」となりました(438 銀河中 294 に付与・中央値 z ≈ 0.58)。代理の下での記憶残差は −0.0023 dex で、全期間を積んだ場合の約 1/15 です。ただし星の組み上がり=膜の記憶の開始ではなく(代理であって同一ではありません)、この時点では、零テストの検出力を決める ρ・必要銀河数 N_req の値はまだ 1 つも出ていませんでした(その後の結果は今回の更新と ③)。(2) 公開済みの WALLABY Pilot(DR1+DR2)だけでは零テストは 1 ビンも成立しないことが確かめられました。壁は標本数ではなく角分解能(半長軸あたりのビーム数の中央値 2.76)で、この時点では本サーベイ待ちと位置づけていました(その後の見通しは今回の更新と ③)。恒等予言 F5 に関わる変更はありません。膜固有の証拠になりうる観測経路は零テスト(R1)一本・監視タスク稼働中——という位置づけは不変です。
変更は 2 点です。(1) 零テストの実行設計が前進しました(2026-08-25・R2 前倒し検討)——拘束付きの宇宙再現(Manticore-Local の後験 80 実現)を使って ε_max の履歴プロキシを物理量化する推定量を設計し、必要銀河数の希釈則 N_req(ρ) = N₀/ρ² を確定しました。これは設計と toy 検算のみで、零テストの実行でもρ の実測でもありません(実行は WALLABY 本サーベイ公開と同時)。(2) 恒等予言 F5 が光の伝播層オフセット δ に対して壊れないことが確認されました(前提の明文化であって成立の主張ではありません)。膜固有の証拠になりうる観測経路は零テスト(R1)一本・監視タスク稼働中——という位置づけは不変です。
最大の変更は、弱重力レンズのスリップ署名が撤回されたことです(2026-08-22・AP-5)。旧版はこれを「膜を見分ける第二の柱(P2)」に掲げていましたが、ずれを生む応力係数が第一原理から導出できず、現行のレンズ側の主張は「比は 1 のまま」という恒等予言 F5 ただ一つになりました。したがって膜固有の証拠になりうる観測経路は、ボイド銀河のヒステリシス零テスト(R1)一本です。あわせて版番号系列を再編し、版スタンプを基準文書 v2.16(2026-08-24)に統一しました。
旧版が P2 に掲げていた数値予言(谷 ≈0.88・200 kpc で ≈1.5 の外縁超過・η=1 に対する 1.25σ の緊張を「膜の署名」と読む解釈)は、本文からすべて外し、下部の履歴ボックスに移しました。
理論が科学であるためには、外れたら捨てるという反証可能性が要ります。膜宇宙論(重力子内包版)は、銀河の回転曲線を再現できる一方で、その成功は標準MOND/暗黒物質と数学的に区別できません(縮退)。だからこそ、膜を他から見分ける条件をあらかじめ宣言し、その通りに観測へ問う姿勢が大切です。旧版のこのページは二本柱——P1「ヒステリシス零テスト」と P2「弱重力レンズのスリップ署名」——を並べた検証アリーナでした。現在、柱は一本です。P2 は 2026-08-22 に撤回され、レンズ側は「ずれない」という恒等予言へ反転しました。事前登録の作法として、その撤回もこのページに記録します。
① なぜ事前登録なのか
膜モデルが銀河スケールの観測を再現できることは、それ単体では膜が正しい証拠になりません。標準MOND/RAR・暗黒物質(ΛCDM)と縮退しており、同じ観測を同じように説明できるからです。膜を識別するには、「膜ならこうなる/他の理論ならこうなる」という事前に宣言した差を、観測で切り分ける必要があります。結果を見てから理屈を後付けしないために、予言は事前に登録します。
そして事前登録には、もう一つの義務が付いてきます。宣言した予言が自分の理論の内部から支えられなくなったとき、それを撤回して記録に残すことです。本ページの④は、その実行記録でもあります。
② 唯一生きている柱(P1)——ヒステリシス零テスト
P1現行で膜固有の証拠になりうる観測経路は、ボイド(宇宙の空隙)に住む銀河で履歴依存性を見る「ヒステリシス零テスト」ただ一本です。手順は、現在の局所密度を固定したビンの中で、ボイド銀河の RAR 残差を「履歴プロキシ」に回帰し、その傾き b_hist を見る、というものです。理論ごとの予言は定性的にはっきり分かれます。
膜が記憶を持つ理由は明快です。膜は重力が強まると展開して重力子を解放しますが、いったん展開すると容易には戻れず(条件6の非対称性)、過去に到達した最大展開に凍結されます。これが「記憶」の物理的な実体で、標準MONDにはありません。現在の状態を固定しても履歴で残差が変わるか否か——これが、現行の膜モデルが持つ唯一の定性的な見分けです。
| 理論 | 傾き b_hist の予言 |
|---|---|
| 標準MOND+EFE(外部場効果) | 0(厳密。履歴に依存しない) |
| 膜(重力子内包版) | 非ゼロ(予言振幅 EFF_HIST ≈ +0.0365 dex) |
補足(正直な整理):履歴傾きの符号だけなら標準MOND+EFE がボイドで与える符号と縮退します。決定的な差は符号ではなく、「現在密度を固定したとき、履歴傾きが 0 か非0 か」という一点です。
③ P1 の現状——未到達(棄却でも確認でもない)
零テストはまだ実行されていません。膜の予言(傾きが 0 でない)は、棄却されたのでも確認されたのでもなく、判定できるだけのデータがまだ無い(未到達)状態です。2026-09 に、実行に向けた準備(R1 前倒し検討と実行設計 R2)を進め、次のことが分かりました。
(1) 公開済みのデータでは、まだ 1 ビンも組めない
公開済みの WALLABY パイロット(DR1+DR2)で零テストの条件を通る銀河は 20〜24 個にとどまり、密度をそろえたビンが 1 つも成立しませんでした(2026-09-18)。壁は標本の数より角分解能(銀河 1 つあたりに入る電波望遠鏡のビームの数が少ない)です。WALLABY 本サーベイは 2025 年末時点で約 11.5% の完了で、公開の日程は発表されていません。
(2) 必要な銀河の数は、思っていたより桁違いに多い見込み
基準文書の必要規模(3σ での検出に約 304〜672 個)は、簡易模型(toy)の履歴の幅で較正した値です。そこで、拘束付きの宇宙再現(Manticore-Local)と銀河ごとの星形成史から実際の「履歴のプロキシ」を作り、見積もり直しました。
- 代理量の当て具合:ρ = 0.764。ただしこれは条件を満たせた 101 銀河(目標の 279 に届かない縮小母集団)での値で、零テストに十分だという根拠にはなりません。必要銀河数 N_req は出していません。
- 先行の試し打ち:SPARC の 44 銀河で回帰を先に走らせたところ、傾きは +5.54 ± 5.89(予言は約 −0.45)で、ゼロとも膜の予言とも区別できませんでした。これは結果を見ながら行ったパイロットであり、零テストそのものではありません。
- 原因:銀河どうしで履歴のプロキシの値がほとんど違わないことです。今の代理量のままでは、3σ に約 2 万〜15 万個が要る見込みです。
公開データ(WALLABY パイロット):条件を通るのは 20〜24 個・ビンが成立しない(壁は角分解能)
必要規模:toy 較正では約 304〜672 個 → 実際の代理量では約 2 万〜15 万個(見積り)
WALLABY 本サーベイ完了時に使える見込み:約 462 個(参考値)
(3) いまの位置づけ
WALLABY 本サーベイが完了しても使える銀河は数百個(約 462 個・参考値)の見込みで、今の代理量のままでは決着は当面見込めないと記録しました(2026-09-24)。これは見積りであって、「零テストは決着しないと判定された」という意味ではありません。代理量の改良も試しましたが、公開データで試せる道はどれも単独ではこの規模に届かない見込みです。残差のばらつきを下げる道は、必要数を 1.3〜1.6 分の 1 にしか減らせず、決着の見通しを決めているのはばらつきより代理量の幅だと分かりました。零テスト以外の観測経路として調べた天の川の矮小楕円体銀河の近点も、検出力が足りないとして閉じました。
そのため、当面は理論の側に重心を置いています(WALLABY 本サーベイの公開は引き続き見守ります)。それでも、膜固有の証拠になりうる観測経路がこの零テスト一本であることに変わりはありません。
※ 旧版のこの節は「零テスト可試料 89 個で robust NULL」「本命は WALLABY 本サーベイ(約 1 万の分解回転曲線)」と書いていました。89 個の元の記録は現在確認できていないため本節の根拠から外し、使える銀河の数は品質条件を通る見込み(約 462 個・参考値)に改めました。
④ 撤回された柱(P2)——弱重力レンズのスリップ署名
P2旧版の第二の柱は、回転とは独立な土俵である弱重力レンズでの予言でした。要点は「光の曲がりと物体の運動が、同じ強さで効くとは限らない(スリップ)」ことで、レンズ/力学比が 1 からずれること、および質量を追わない外縁超過が出ることを検定対象としていました。この柱は 2026-08-22 の著者裁定 AP-5 により撤回されています。
撤回に至った論理は三段です。
- 第一段(厳密):確定核の関係 mu=eps を壊せるのは、折り目の配向分布の l=2(四重極)成分だけです(多重極の直交性から厳密に従います)。
- 第二段(第一原理 toy B-3d の定理部):その四重極が「観測できるずれ」に変換されるには、応力係数 λ(実効線張力/線エネルギー密度)が非ゼロでなければなりません。線局在+軸対称の 2 仮定の下で、未知数はこの λ ただ 1 個に集約されます。
- 第三段(係数部・格上げ失敗の正直な記録):λ を第一原理で出そうと 4 つのサブモデル(凍結曲げ板/折り目内の重力子ガス/ラッチ/膜張力ルーティング)を検討しましたが、旧版が採っていた λ = +1 はどれからも導出されませんでした。しかも λ ≠ 0 は必ず単極子を随伴し、λ = +1 は能動質量ゼロとなって別の公理と自己矛盾します。
そこで λ = 0(折り目の凍結曲げ成分はダストであり応力の異方部を持たない)が採択され、検定対象そのものが消えました。スリップ予言 0.55〜1.21% は撤回、連動して反証点 F1〜F4 も退役しています。
⑤ 現行のレンズ側の主張——恒等予言 F5(比は 1 のまま)
予言が消えたのではなく、予言の中身が「ずれる」から「ずれない」へ反転した——これが現在地です。
eta_len = 1(レンズ/力学比=1)。偏差は ≲ 10⁻⁷ にとどまり、永久に観測不能な水準です。旧版が「外縁超過レンズ」と呼んでいた折り目位相(成分2)も、必要値まで約 5.1 桁不足し、やはり永久に観測不可能です。
反証点:percent 級のスリップがどちらの符号でも系統誤差の床を超えて有意に検出されれば、採択構成が棄却されます。これは理論全体の死ではなく構成の棄却で、棄却時は構成の再選択へ戻ります。
ここが誤解しやすい点です。F5 が当たっても(比=1 が観測されても)、それは膜の支持証拠になりません。標準MOND も暗黒物質(ΛCDM)も同じく比=1 を予言するからです。つまり F5 は「膜を見分ける検定」ではなく、採択構成が外れたときに自分で捨てられるようにするための反証可能性の枠です。事前登録の対象としては生きていますが、識別の柱ではありません。
現在の弱レンズ RAR(Brouwer ら 2021・KiDS-1000)は力学 RAR と約 0.1 dex で一致し、系統誤差で律速されています。比=1 に対する残差は約 1.25σ にとどまり、統計的に無意味な水準で恒等予言 F5 と整合します。次世代サーベイ Euclid Wide と Rubin LSST で精度は跳ね上がりますが、その役割は「膜を見分けること」ではなく「採択構成を反証しうるかどうか」です。ここでも勝負を分けるのは統計ではなく系統誤差で、銀河を形態で分けて解析する工夫が鍵になります。
⑥ 検証アリーナの整理——柱は一本、枠がもう一つ
| 登録項目 | 土俵 | 現状 |
|---|---|---|
| P1 ヒステリシス零テスト(R1) | ボイド銀河の回転曲線 | 生きている唯一の柱。未到達(零テストは未実行・棄却でも確認でもない)。今の代理量では 3σ に約 2 万〜15 万個が要る見込みで、WALLABY 本サーベイ完了後も決着は当面見込めない(見積り・判定ではない。③ 参照) |
| F5 恒等予言(旧 P2 の後継) | 弱重力レンズ(独立な土俵) | 比=1・偏差 ≲ 10⁻⁷。膜を見分ける検定ではない(反証枠のみ)。NULL は支持証拠として扱わない |
| P2 スリップ署名 | 弱重力レンズ | 2026-08-22(AP-5)で撤回。応力係数 λ が第一原理から導出できず、採択構成 λ = 0 では検定対象が存在しない |
膜固有の正の証拠は現時点で存在しません。決着は零テスト一本にかかっています。
以下は旧版(2026-07-04)が本文に掲げていた予言で、現在はいずれも本文から外しています。事前登録の作法として履歴だけ残します。
- 弱重力レンズのスリップ署名(2026-08-22・AP-5 で撤回)——ずれを生む応力係数 λ が第一原理から導出できず、採択構成(λ = 0)の下では検定対象そのものが存在しない。現行は恒等予言 F5(比=1)へ一本化。連動して反証点 F1〜F4 は退役。
- 比の非単調な形「内側でほぼ 1 → 中間で谷 ≈0.88 → 200 kpc で ≈1.5 の外縁超過」——λ = +1 を前提にした形で、上記により撤回。
- 「η=1 に対し約 1.25σ の緩い緊張=膜の署名の芽」という読み——撤回。同じ 1.25σ は現在、統計的に無意味な水準で恒等予言 F5 と整合と読みます。
- 「Euclid/Rubin で η を直接検定する」——役割を変更。次世代サーベイの役割は膜を見分けることではなく、採択構成を反証しうるかどうかの検定。
- 比の下地 R = (1+η)/2 という式——現行の主張ではないため本文から削除。
- 「レンズ質量=力学質量のちょうど 3/4」——重い重力子(vDVZ の trace 1/3)前提の値で「折り目の幾何が決める比」へ降格していたが、さらに上位の slip 路線ごと 2026-08-22(AP-5)に撤回された。
- 「振幅は微調整 α₄≈0 に依存」という但し書き——撤回済み(重い重力子前提を採らないため)。太陽系の安全性は位相/曲率セクターの役割分割で担保。
- 「外縁超過レンズ」路線——折り目位相(成分2)は必要値まで約 5.1 桁不足し、永久に観測不可能。
重力子内包機構による暗黒物質的現象の説明は理論的再構築の段階にあり、観測による正の証拠は未確立です。膜モデルは銀河スケールの観測を再現できますが、その成功は標準MOND/暗黒物質(ΛCDM)と数学的に区別できません(縮退)。SSoT を動かしうる観測経路は、ボイド銀河のヒステリシス零テスト(R1・WALLABY 本サーベイ待ち)ただ一本です。かつて第二の柱としていた弱重力レンズのスリップ署名は 2026-08-22(AP-5)に撤回され、レンズ側は「比は 1 のまま」という恒等予言 F5(偏差 ≲ 10⁻⁷)へ一本化されました。F5 は膜を見分ける検定ではなく採択構成の反証枠であり、F5 の NULL 観測を支持証拠として扱いません。
※ 2026-08 に版番号系列を再編しました(旧 v2.29/v3.92 系列を継承)。
使用データ・出典:SPARC(Lelli et al. 2016)・WALLABY・Brouwer et al. 2021(KiDS-1000)・Euclid/Rubin LSST ほか公開データ。確定核(公理系・畳まれ則・mu=eps)は「形のレベル」で確定・不変。膜を見分ける検定はヒステリシス零テスト(R1)一本で、いずれも正の証拠は未確立。